日本アフリカ高度人材キャリア形成の事例:国際協力機構
セネガルの研究経験、キャリア形成と現在の仕事 殿内海人氏
私は、大学院では、セネガルにおける宗教組織「ダイラ」を研究しました。現在は、国際協力機構(JICA)で勤務しています。
大学院では、セネガルの首都ダカールの現地の家庭の人と一緒に暮らしながら、ダイラの活動内容、ダイラにどのような人が参加しているのか、参加者の日常生活について調査し、都市の社会状況が変化する中で信徒にとって暮らしの中でダイラがどのような意味を持っているのかを研究しました。最初はインタビューで聞きたいことが聞けないなど苦労しましたが、現地語を少しずつ覚えて一人一人と信頼関係を作るようにして、調査を進めていきました。
また、インタビューに加えて、ダカールにあるシェイク・アンタ・ジョップ大学(UCAD)を訪問し、教授から自分の研究に対してアドバイスを頂いたことも非常に貴重な経験になりました。インタビューや参与観察では一つ一つの個別具体的な事例を扱いますが、UCADの教授の訪問からは、欧米や日本の研究とは異なる視点から、最新のセネガル社会を体系的に捉えることを学びました。
私はこのセネガルの研究の経験を通して、日本でニュースや論文を読んでいるだけでは分からなかった現地社会・人々の知識と実践に触れ、現地社会に内在するメカニズムを活かせるような形の国際協力のモデルづくりを追求したいと考え、JICAに就職しました。
現在は、相手国の社会課題を解決するために、まずはその国の現状とニーズを分析した上で、プロジェクトの計画を相手国の人と共に立案して実施する仕事をしています。JICAの協力は、最終的には日本の協力がなくてもその国の人々が自国の課題に自ら対処できる状態を目指すため、その国を社会、経済、文化など様々な側面から理解して、相手国が持続的に取り組みを続けられる仕組みを作っていきます。
私の仕事の基礎はこのセネガルの研究経験にあると思っています。その中でも特に、UCADの教授から学んだ、相手国の目線で相手国を体系的に捉える視点は、その国の人々が自国の課題に自ら対処できる状態を考える上で非常に重要なポイントとして、今でも大きな自分の財産になっています。また、どんなプロジェクトも、そのプロジェクトのデザインが論理的に正しいだけでは物事は動かず、1人1人との人間関係を丁寧に作り上げていくことが重要です。JICAの仕事では様々な国・地域の人と一緒に物事を進める機会が多いですが、セネガルの研究を通して得られた、見ず知らずの土地に行って一人一人と信頼関係を構築して調査を進めて経験が大きく役立っています。
殿内海人氏
国際協力機構(JICA)企画部 業務企画第一課(2022年7月末現在)
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻2020年修了