ナミビアでの調査経験と現在のキャリア
三宅 栄里花
(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了(2019年度)、
双日株式会社(2023年3月末現在))
私は南部アフリカのナミビア、その中でも狩猟採集民の定住エリアとなっているナミビア北中部の農村を調査対象地として、狩猟採集民サンとその地域の多数派の住民であるオバンボの間における土地利用をめぐる関係を研究していました。研究の手法は現地での参与観察と文献調査を取り、実際にサンの人びとが住む地区に滞在しながら生業に関する聞き取り調査や農地の測量などを実施しました。聞き取り調査では、1問1答のインタビュー形式にならないように、彼らが考えていることを自然に引き出せるように、と心掛けていました。実際には、現地語を習得することも難しく、なかなか苦労しましたが、毎日毎日彼らのもとに足を運び、信頼関係を築くことを重要視して調査をしていきました。
北中部の農村でのフィールドワーク以外の期間は、首都ウィントフックに滞在していました。その間にはナミビア大学を訪問し、同じくナミビア北部の土地利用を研究するRomie Nghitevelekwa講師やその同僚の先生方との意見交換等を実施できたことで、フィールドワークをより実りのあるものにできたと考えています。私は2回ナミビアに渡航しましたが、2回目の渡航時にはRomie講師の研究プロジェクトに参加させていただき、調査許可の取得から研究内容のブラッシュアップまで(更には、ウィントフック滞在中はRomie講師の自宅にホームステイさせてもらい私生活まで)、多岐に渡るサポートをいただきました。
そんな私は現在、全くフィールドの異なる総合商社で勤務しています。扱う商材が多岐に渡る商社ですが、私は海外企業の代理店ビジネスを担当しており、具体的には、日本顧客との間に立って両者をつなぐ役割をしています。ここではまさに、ナミビアのフィールドで経験した現地の方々との信頼関係構築と同じことが求められます。フィールドワークを通じて、相手との関係性に基づいたコミュニケーションを取ることの重要性を学んだことで、違和感なくビジネスの場での関係形成にも取り組むことができました。
地域研究と商社でのビジネス、その存在意義や価値観は違えど「人」や「社会」がその存在を支えていることには変わりありません。これからも、フィールドワークで培った、信頼関係を構築するミクロな視点を大切に、よりよい社会づくりにアプローチしていきたいと思います。